保証債務を履行するために不動産を譲渡した場合の課税関係

2013/05/16

今回は、不動産をお持ちの人が他人の債務の保証人となっていた場合において、その債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難な状況であることから、その債務者に代わって保証人が債務の履行をしたときの課税関係について説明します。

このような事態に直面したくはありませんが、他人の債務を弁済するために、やむを得ず自分の土地を売却して債務を返済しておきながら、更に土地の売却に係る譲渡所得について課税がされるとなると納税資金に苦慮することになります。

そこで、納税者の担税力を考慮して、一定の要件に該当する場合には、譲渡所得の金額の計算について特例の適用を受けることができます。

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1 保証債務の履行のための譲渡所得の特例

次に掲げる要件を満たす譲渡所得については、一定の金額を譲渡所得の金額の計算上無かったものとする特例の適用を受けることができます。
(1)適用要件
① 保証債務を履行するため譲渡所得の基因となる資産を譲渡したこと。
…すなわち、他人の債務を弁済するために、自分が所有している土地・建物などの不動産を売却したこと。
② 保証債務の履行による求償権の全部又は一部が行使不能となったこと。
…すなわち、保証人が債務者に代わって債務を弁済したことにより、保証人は債務者に対して、今度は保証人である私に対して債務を弁済しなさいと要求できる求償権を取得します。しかし、債務者の弁済能力が不足しているため、その求償権の全部又は一部が行使できない状況であること。

(注1)この特例は、譲渡所得の他に、山林の伐採若しくは譲渡による山林所得若しくは雑所得(営利を目的として継続的に行われる山林の伐採又は譲渡による山林所得又は雑所得を除く)又は株式の発行会社にその株式を譲渡したことによる配当所得(みなし配当)についても適用されます。

(注2)求償権の行使不能による損失が不動産所得、事業所得又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるものである場合には、この特例は適用されません。

(2)特例の内容
譲渡所得について、この規定の適用を受けた場合には、次に掲げる金額のうち最も少ない金額に相当する金額は、保証債務を履行するため資産を譲渡した年の譲渡所得の金額の計算上、なかったものとされます。(所法64②、所令180②、所基通64-2の2)
すなわち、なかったものとされるとは、そもそも所得が生じなかったものとするという意味です。
① 求償権の行使不能額
② 保証債務を履行するために資産を譲渡した年分の所得税の課税標準の合計額
③ ②の課税標準の計算の基礎とされた譲渡所得の金額

(3)申告要件
この特例の適用を受ける場合には、確定申告書、修正申告書、更正請求書に「保証債務の履行のための資産の譲渡に関する計算明細書」を添付することが必要です。

次回は、被相続人が保証人となっていた場合において、相続人が被相続人に代わって被相続人の保証債務を履行したときの取り扱いについて説明します。

(このブログは、作成時(H25.5月)現在の法令等に基づいて作成しています。)

税理士法人中部メトロ社員税理士 足立勝彦のブログ「不動産のなやみ」から掲載。

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