消費税が課税される取引について

2013/04/02

これまで、消費税の納税義務について説明してきました。
今回は、納税義務のある不動産をお持ちの人もお持ちでない人でも共通の疑問点として、どういう取引が消費税の課税対象となるのか?ということについて説明していきます。

消費税の課税対象となる取引は、原則として国内取引と保税地域から引き取られる外国貨物の輸入取引です。
国内取引の内、消費税の課税対象となる取引は、後に説明する第一段階における4つの要件を満たす取引です。

1 消費税5%(平成26年3月31日まで。以下同じ。)を課税する取引の判定順序

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*税率について
消費税の税負担は一般的に国税・地方税を合わせた税負担額(5%)をいいますが、消費税法における税率は、国税のみの税率(平成26年3月31日までは4%。以下同じ。)をいいます。
納付する消費税額は、国税の税率4%を乗じて得た額と、その税額に地方消費税分として25%を乗じて得た額との合計額を納付しますので、結果的に5%の負担となります。
以下、一般的に馴染みのある表現である「消費税5%」として説明します。
(消費税法における税率は、あくまでも4%です。)

消費税5%を課税する対象となる取引は、以下のとおり国内取引を3段階に区分して判定します。

(第1段階)
課税の対象となるためには、4つの要件をすべて満たさなければなりません。いずれか一つでも満たさない場合には、その取引は不課税取引となります。

①国内において行うものであること。
②事業者が事業として行うものであること。
③対価を得て行うものであること。
④資産の譲渡・貸付、役務の提供であること。

①より、国外において行われた取引は不課税取引となります。
②の事業者とは個人事業者及び法人をいいます。
法人の行う活動は、すべて事業として行う取引に該当しますが、個人事業者の行う活動については、そのうち事業者として行う取引に限られます。
③④の対価を得て行う資産の譲渡・貸付、又は役務の提供とは、簡単な例を挙げて説明しますと、例えば、パン屋さんが、パンという商品を販売し、その対価として100円もらったとします。
パン屋さんはパンという資産の譲渡等を100円という対価を得て行いました。これが、上記③④の要件です。

(第2段階)
第一段階の課税の対象の内、消費税法において非課税取引として限定列挙されている取引とそれ以外の取引に区分します。
なお、主な非課税取引は次のとおりです。(国税庁ホームページから抜粋)
(1) 土地の譲渡及び貸付け
土地には、借地権などの土地の上に存する権利を含みます。
ただし、1か月未満の土地の貸付け及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税取引には当たりません。
(2) 有価証券等の譲渡
国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡。
ただし、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などの譲渡は非課税取引には当たりません。
(3) 支払手段の譲渡
銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡。
ただし、これらを収集品として譲渡する場合は非課税取引には当たりません。
(4) 預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
預貯金や貸付金の利子、信用保証料、合同運用信託や公社債投資信託の信託報酬、保険料、保険料に類する共済掛金など
(5) 郵便事業株式会社、郵便局株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(6) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
(7) 国等が行う一定の事務に係る役務の提供
国、地方公共団体、公共法人、公益法人等が法令に基づいて行う一定の事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料。
なお、この一定の事務とは、例えば、登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付などです。
(8) 外国為替業務に係る役務の提供
(9) 社会保険医療の給付等
健康保険法、国民健康保険法などによる医療、労災保険、自賠責保険の対象となる医療など。
ただし、美容整形や差額ベッドの料金及び市販されている医薬品を購入した場合は非課税取引に当たりません。
(10) 介護保険サービスの提供
介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス、施設サービスなど。
ただし、サービス利用者の選択による特別な居室の提供や送迎などの対価は非課税取引には当たりません。
(11) 社会福祉事業等によるサービスの提供
社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業、更生保護事業法に規定する更生保護事業などの社会福祉事業等によるサービスの提供
(12) 助産
医師、助産師などによる助産に関するサービスの提供
(13) 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
(14) 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
義肢、盲人用安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車いす、改造自動車などの身体障害者用物品の譲渡、貸付け、製作の請負及びこれら身体障害者用物品の修理のうち一定のもの
(15) 学校教育
学校教育法に規定する学校、専修学校、修業年限が1年以上などの一定の要件を満たす各種学校等の授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明手数料など
(16) 教科用図書の譲渡
(17) 住宅の貸付け
契約において人の居住の用に供することが明らかなものに限られます。
ただし、1か月未満の貸付けなどは非課税取引には当たりません。
(消法4、6、消法別表第一、消令8~16の2、平22改正消令附則1、旧消令11、消基通6-1-1~6-13-9)

(第3段階)
第2段階の課税される取引を輸出免税となる取引とそれ以外の取引に区分します。
この第3段階におけるそれ以外の取引が、消費税5%を課税する対象となる取引です。

以上から分かるとおり、消費税5%を課税する取引は、消去法により第一段階→第二段階→第三段階へと順を追って判定することとなります。

2 非課税取引と不課税取引
① 不課税取引
不課税取引とは、前述のとおり、判定手順の第一段階において、4要件の内、一つでも該当しないものがあるときは、その取引は不課税取引となり、消費税の計算においては一切関係してきません。
例えば、国外取引、対価を得て行うことに当たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などがこれに当たります
② 非課税取引
非課税取引とは、4前述のとおり、要件を満たすため消費税法が適用される課税の対象になりますが、「消費になじまないもの」「社会政策的配慮に基づくもの」などの理由により、限定列挙されて非課税対象とされている取引をいいます。
③ 非課税取引と不課税取引との相違点
不課税取引と非課税取引とは、どちらも消費税5%が課税されない取引である点においては共通ですが、不課税取引とはそもそも消費税法の規定する取引ではないことから、課税売上割合などの消費税の計算には一切関係しない点が異なります。
課税売上割合は、分母を総売上高(課税取引、非課税取引及び免税取引の合計額)とし、分子を課税売上高(課税取引及び免税取引の合計額)としたときの割合です。
非課税取引は、原則として分母にだけ算入しますが、これに対して、不課税取引は、そもそも消費税の適用の対象にならない取引ですから、分母にも分子にも算入しません。

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3 非課税取引と免税取引
① 免税取引
消費税法では、消費税の課税の対象となる取引であっても、消費税5%を課税しない取引として、前述の非課税取引のほかに「免税取引」があります。
例えば、商品の輸出や国際輸送、外国にある事業者に対するサービスの提供などのいわゆる輸出類似取引などです。
この場合には、輸出証明書を保管するなど、一定の要件を備えている必要があります。
② 非課税取引と免税取引の相違点
非課税取引と免税取引とは、消費税5%が課税されない取引である点においては共通ですが、その取引のために行った仕入れについて仕入税額の控除を行うことができるかどうかという点が異なります。
すなわち、非課税とされる取引には消費税が課税されませんので、非課税取引のために行った仕入れについては、原則としてその仕入れに係る消費税額を控除することができません。
これに対して、免税とされる輸出や輸出類似取引は、課税資産の譲渡等に当たりますが、一定の要件が満たされる場合に、その売上げについて消費税が免除されるものです。したがって、その輸出や輸出類似取引などのために行った仕入れについては、原則として仕入れに係る消費税額を控除することができることとなります。

4 輸入取引
(1)輸入取引に係る消費税
保税地域から引き取られる外国貨物、いわゆる輸入品には、原則として消費税がかかります。
この外国貨物を保税地域から引き取る者は、原則としてその引取りの時までに輸入申告書を提出し、消費税を納付しなければなりません。
なお、輸入取引についても、別途地方消費税が課税されます。
(2)納税義務者
輸入品を引き取る者が消費税の納税義務を負います。したがって、免税事業者はもとより、個人事業者でない給与所得者や主婦であっても、輸入品を引き取るときには納税義務者となります。
(3)非課税とされる輸入取引
保税地域から引き取られる外国貨物のうち、次に掲げるものが非課税とされています(消法6②、別表第二)。
① 有価証券等、 ② 郵便切手類、 ③ 印紙、 ④ 証紙、⑤ 物品切手等、 ⑥ 身体障害者用物品、 ⑦ 教科用図書

(このブログは、作成時(H25.4月)現在の法令等に基づいて作成しています。)

税理士法人中部メトロ社員税理士 足立勝彦のブログ「不動産のなやみ」から掲載。

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