私のブログで以前説明した小規模宅地等の特例について、平成25年度税制改正により拡充されます。
不動産をお持ちの方にとっては、とても影響のある税制改正ですので、今回は、この小規模宅地等の特例の改正内容について説明します。
1 特定居住用宅地等の二世帯住宅要件の緩和。
(1)現在の取り扱い
1階に両親が住んでいて、2階に息子夫婦が住んでいる二世帯住宅で、父が死亡して、息子が住宅の敷地を相続により取得した場合には、現在の取り扱いでは、1階と2階が内部の階段でつながっているなど、建物の構造上、内部で行き来できる場合に限り、息子が被相続人と同居している親族として、両親が住んでいた1階部分に対応する敷地を特定居住用宅地等として小規模宅地の特例の適用を受けることができます。
したがって、一階と二階とが外階段でつながっている完全分離の二世帯住宅では、息子が父と同じ建物で寝起きを共にしている同居親族とは取り扱っていませんでした。
(2)改正後
特定居住用宅地等の範囲に、被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物のうち被相続人、被相続人の配偶者又は被相続人の親族の居住の用に供されていた一定の部分に対応する宅地等が追加されました。
したがって、上記(1)について、平成26年1月1日以降は、二世帯住宅の構造要件がなくなり、完全分離の二世帯住宅であっても特定居住用宅地等として小規模宅地の特例の適用を受けることができます。
2 特定居住用宅地等の適用対象面積の拡大と特定事業用等宅地等との完全併用。
(1) 現在の取り扱い
小規模宅地等の特例の対象である、特定事業用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等(以下「特定事業用等宅地等」という。)は400㎡まで、特定居住用宅地等は240㎡まで、貸付事業用宅地等は200㎡までという面積制限があります。
さらに、この小規模宅地等を複数選択する場合には、下記の算式とおり適用される面積が制限されます。
<算式>
特定事業用等宅地等:A
特定居住用宅地等:B
貸付事業用宅地等:C
A+B×5/3+C×2≦400㎡
(2) 改正後
上記(1)について、平成27年1月1日以降は、特定居住用宅地等の適用対象面積が330㎡に拡大され、かつ、特定事業用等宅地等の400㎡と完全併用できることとなります。
すなわち、特定居住用宅地等の対象面積が330㎡、特定事業用等宅地等の対象面積が400㎡あるとすると、合計最大730㎡まで小規模宅地の特例の適用を受けることができるようになります。(措置法69の4②)
ただし、注意しなければならないのは、貸付事業用宅地等の適用面積は現行通り200㎡であること、及び貸付事業用宅地等と併用して適用を受ける場合には、下記のとおり面積制限を受けることとなります。
<算式>
特定事業用等宅地等:A
特定居住用宅地等:B
貸付事業用宅地等:C
A×200/400+B×200/330+C≦200㎡
3 被相続人が老人ホームに入所した場合
(1)現在の取り扱い
被相続人が終身利用権を取得して老人ホームに入所した場合には、被相続人が入所前に住んでいた住宅は、被相続人の居住の用に供されていなかったものとして、その敷地については特定居住用宅地等に該当しないこととされていました。
(3) 改正後
平成26年1月1日以降は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等で、一定の事由により相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかったものも適用対象に加わりました。(措置法69の4①)
一定の事由とは、次の事由をいいます。
① 被相続人に介護が必要なため入所したものであること。
② 当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと。
(このブログは、作成時(H25.4月)現在の法令等に基づいて作成しています。)
税理士法人中部メトロ社員税理士 足立勝彦のブログ「不動産のなやみ」から掲載。