近年贈与税の申告人員が増加している、子供や孫に住宅建築のための資金を贈与した場合の贈与税の課税関係について説明していきます。
国税庁が平成24年5月に発表した、「平成23年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況等」によりますと、下記のとおり贈与税の申告人員・納税人員・申告納付税額はいずれも増加しています。また、住宅所得等資金の非課税の適用を受けるための申告人員も増加しています。
なお、下記の図及び解説は国税庁ホームページから抜粋しています。
(注) 翌年3月末日までに提出された申告書の計数です。
平成23年分贈与税の申告書を提出した人員は、42万7千人で、前年分(39万5千人)から3万2千人(+8.2%)増加しました。そのうち、申告納税額のあるもの(納税人員)は27万4千人で、前年分(24万3千人)から3万1千人(+12.7%)増加、申告納税額は1,419億円で、前年分(1,306億円)から113億円(+8.7%)増加しました。
(注) 両年分とも翌年3月末日までに提出された申告書の計数です。
住宅建築のための贈与の方法としては、暦年課税贈与と相続時精算課税贈与の2種類があります。
「住宅取得等資金の贈与税の非課税」の特例制度は、平成21年から設けられた制度です。平成21年から22年までは2年間で5百万円限度、平成22年から23年は2千万円以下という所得制限を設けて2年間で1千5百万円限度(平成23年のみは1千万円)でした。
平成24年においては、住宅の床面積が240㎡以下という制限を設けたうえで、以下のとおり改正がされました。
平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間に父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の表の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下、この制度を旧非課税制度と区別して「新非課税制度」といいます。)。
住宅取得等資金に係る贈与税の課税価格が非課税限度額を超える場合には、その超える部分の価格から110万円の基礎控除額を控除した残額に贈与税の累進税率を乗じて贈与税額を計算します。
また、受贈者の選択により、一定の要件を満たした場合には、相続時精算課税制度の適用を受けて、非課税限度額を超える部分の価格から2千5百万円の特別控除額控除後の残額に20%の税率を乗じて贈与税額を計算することができます。
なお、相続時精算課税制度については次回以降に説明します。
この「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」は、扶養義務者からの教育資金の贈与税の非課税と同様に、贈与者に係る相続税対策として有効な手段です。すなわち、被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者は、被相続人から相続開始前3年以内に贈与により取得した財産の価額を、被相続人の相続税の課税価格に持ち戻して相続税の課税価格及び相続税額を計算しなければなりません。しかし、これら贈与税の非課税財産は、被相続人の相続税の課税価格に持ち戻す必要はありません。